おぬきのりこ(vo)
原とも也(g)
おぬきさんは二回目のご出演です。
ライブを行う前には、必ずリハーサルを行います。
これがジャズの面白いところでもありますが、その日が
共演者と初対面と言うことが良くあります。初対面でも
楽譜は共有されていて、1時間強の時間の中でその日の
ライブの打ち合わせを済ませられるのです。最初はよく
分からなかったのですが、ミュージシャンの共通言語と
言うものがあって、「ルバート」とか「コーダ」とか
がぐるぐる回って、うまくいくのです。
もう一つはライブ会場はそれぞれ固有の癖があるので
ミキサーやミュージシャンや機材の配置などで客席に一番いい
音楽が届くように配慮します。私の仕事はこれ。
また話がそれましたが、前回、おぬきさんがいらっしゃって
リハーサルを開始した次の瞬間に何だか自分の股間を
わしづかみにされたような感覚を覚えました。ノックアウト。
言語感覚も独特だなと思っていたら、なんと
官能小説家
でもあったのです。読みました。声と同じ香りがしました。
と言うことで股間をわしづかみにされたい貴方。
6日、吉祥寺「音吉!MEG」でお会いしましょう。
予約はこちらから。http://otokichi-meg.net/events/20181106
作家でいらっしゃるくらいなので、フェースブックも面白い。
長くなりますが、つい先だっての書き込みを転載します。
以下「おぬきのりこ」さんのFBページから
【長文です】
先日、友人と食事をしていた時のことである。寒くなったら鍋でも、という話題が持ち上がると、友人が空虚な微笑みを浮かべながら、とつとつと話をし始めた。
友人の話はこうだった。
友人は三人兄弟。兄は結婚して最近子供が生まれ、弟は一年前から一人暮らしを始めた。友人も実家を離れてもう長い。
つまり、友人のご両親は晴れて夫婦水入らずの生活に入ったわけだが、それぞれ自分の世界を自由に生活していてバラバラだ。というか、友人一家は各自が自由で、一家が揃うことなど昔から滅多にない。
そんな時、母親がナマハゲショーの半額チケットを手に入れた。
母「ナマハゲショーの半額チケットがあるんだけど、行くでしょ?」
父「お、おう?」
普段バラバラなので、こんな時じゃないと二人で出かけることもなかろうと、父は思ったという。
それからしばらくして、長男から電話があった。
母「お父さんとナマハゲショーに行くんだけど、あんたも行く?」
長男「ナマハゲ?おう、赤ん坊にも縁起がいいから行くよ!」
こうして、ナマハゲショーには長男一家も赤ん坊を連れて行くことになった。
母「三男は一人暮らしを始めてから全然実家に帰らなくなったから、三男も誘うよ」
父「お、おう」
こうして、三男もナマハゲショーに行くこととなった。
そんな折、私の友人である次男が実家に電話をすると、なんの説明もなく唐突に「あんたナマハゲショー行く?」と母親に尋ねられ、思わず「行く」と答えてしまう。
かくして、一家総出でナマハゲショーに行くこととなった。生後五ヶ月の赤ん坊はぐずらず泣かず、いつもご機嫌だが、さすがにナマハゲに凄まれたら泣き出すかもしれない。
家族は、赤ん坊がどう反応するのかを想像してウキウキしていた。
会場に着き、きりたんぽ鍋をつつきながら、久しぶりに家族の団欒を楽しんでいると、そこへついに本日の主役であるナマハゲが現れた!
「わるごいねがー」
各テーブルで子供たちの悲鳴や泣き叫ぶ声が上がる。会場はたちまち阿鼻叫喚に包まれた。
そして、ついにこの一家のところにもナマハゲがやってくる。
「悪いごいねがー」
近くで見るとナマハゲの迫力は凄かった。面も大きいし、声も大きい。
ナマハゲが赤ん坊を見つける。
「みづけだぞー。わるいごでねがー?」
ナマハゲが赤ん坊に手を伸ばす。
しかし、いつもご機嫌な赤ん坊。ナマハゲを見てキョトンとしている。
「おらは泣かすのうめぇんだ。おらの手にかかればみーんな泣いちまうんだ」
ナマハゲはここぞとばかりに「わるいごでねがー?」と赤ん坊を覗き込んで凄んだ。
赤ん坊「……(・∀・)」
ナマハゲは「…うん、うん、このごはわるいごでね。いいごだ…」
テーブルにほんの少し、気まずい空気が流れた。これではナマハゲの顔が立たないんじゃないか?と家族は思った。
ナマハゲ「ほがにわるいごいねがー」
その時、ナマハゲは次のテーブルへ行くためのサインとしてそう言ったのだと思う、と友人は言った。
しかし、母の芯のある声が背後からする。
母「ここにいます!この子(友人を指さす)未だに結婚しないんです!」
誰もが「それ!?」と思った。友人はこの歳になってナマハゲに凄まれることになるのかと覚悟を決めた。それはナマハゲの仕事の範疇を超えた瞬間でもあった。
ナマハゲ「……それはひとそれぞれのペースがあっからな」
ナマハゲはゴニョゴニョと言葉を濁し、「おらは行ぐ」と言って去っていった。
家族にまだ自分がゲイであることを打ち明けられずにいる友人は、これでまたしばらく実家から足が遠のくのであろう。
友人の幸せを願って止まない。